運動エネルギーと仕事の関係(仕事とエネルギーの定理)とは、物体にされた正味の仕事が、その物体の運動エネルギーの変化に等しいという法則です。加速度や時間を使わずに、速さや距離を求められます。この記事では、仕事、運動エネルギー、四つの例題と練習問題を解説します。
重要ポイント
- 仕事は W = F d cos theta で、単位はジュールです(1 J = 1 N m)。
- 運動エネルギーは KE = 1/2 m v^2 です。負になることはありません。
- 運動エネルギーと仕事の関係:正味の仕事 = KE final - KE start。
- 摩擦力はふつう負の仕事をします。落下する物体には、重力が正の仕事をします。
- 力・距離・速さが出てきて、時間が出てこない問題で使いましょう。
運動エネルギーと仕事の関係とは?
結論: 運動エネルギーと仕事の関係とは、物体にされた正味の仕事が、運動エネルギーの変化に等しいというものです:W net = KE final - KE start。正味の仕事が正なら、物体は速くなります。負なら遅くなります。ゼロなら速さは変わりません。
OpenStax University Physics (7.3) には、次のように書かれています:「粒子にされた正味の仕事は、その粒子の運動エネルギーの変化に等しい。」
物理でいう「仕事」とは?
力が物体を動かすとき、その力は仕事をします。力が一定の場合:
W = F d cos theta
F は力(単位はニュートン、N)、d は変位(単位はメートル、m)、theta は力と運動の向きのなす角です。仕事の単位はジュールです。1 ニュートンの力で物体を 1 メートル動かしたときの仕事が 1 ジュールなので、1 J = 1 N m です(AQA GCSE Physics, 4.5.2)。
仕事が正・負・ゼロになるのはいつ?
符号は角度で決まります(OpenStax, 7.1)。
| 角度 theta | 仕事 | 例 |
|---|---|---|
| 0度以上90度未満 | 正 | 台車を前に押す |
| 90度 | ゼロ | 平らな地面の車にはたらく垂直抗力 |
| 90度より大きく180度まで | 負 | すべる箱にはたらく摩擦力 |
物体が動かないときも、仕事はゼロです。かばんを持って立っているだけなら、腕が疲れても、かばんに仕事はしていません。
運動エネルギーとは?
運動エネルギーは、動いている物体がもつエネルギーです:
KE = 1/2 m v^2
m は質量(kg)、v は速さ(m/s)です。KE の単位はジュールです。速さを倍にすると、KE は四倍になります。
運動エネルギーと仕事の関係はどう導く?
質量 m の物体に、一定の合力 F が運動の向きにはたらき、距離 d だけ動くとします。
- v^2 = u^2 + 2ad から始めます。u ははじめの速さ、v は最後の速さです。
- 式を変形します:ad = (v^2 - u^2) / 2。
- 両辺に m をかけます:mad = 1/2 m v^2 - 1/2 m u^2。
- ニュートンの第二法則より F = ma なので、左辺は F d、つまり正味の仕事です。
- よって W net = 1/2 m v^2 - 1/2 m u^2 = KE final - KE start となります。
力が変化する場合にも成り立ちます(その証明には微積分が必要です)。F = ma の復習は、ニュートンの三法則をご覧ください。
仕事・エネルギー・仕事率の問題に必要な六つの公式。
この表には、仕事(W = F d cos theta)、運動エネルギー(KE = 1/2 m v^2)、運動エネルギーと仕事の関係(W net = KE final - KE start)が載っています。単位はすべてジュールです。 落下する物体に重力がする仕事(W = m g h)と、ばねのエネルギー(E = 1/2 k x^2)も載っています。どちらも単位はジュールです。 最後の行は仕事率です:P = W / t = F v、単位はワットです。
ニュートンの法則ではなく、これを使うのはいつ?
| 問題に出てくるもの | 最適な方法 |
|---|---|
| 力・距離・速さ(時間はなし) | 運動エネルギーと仕事の関係 |
| 時間、または加速度 | ニュートンの法則と運動学 |
| すべり台のような曲がった道 | 運動エネルギーと仕事の関係 |
| 横方向と縦方向の運動が同時にある | 成分に分けた運動学(放物運動) |
エネルギーには向きがないので、仕事はただの数として足し合わせられます。円を描く運動については、円運動をご覧ください。
摩擦力と重力はどう仕事をする?
摩擦力は運動と逆向きにはたらくので、その仕事は負です:W = -f d。平らな面では f = mu m g で、mu は摩擦係数です。
重力は、物体が高さ h だけ落下するとき、正の仕事 W = m g h をします。物体が上がるときは、負の仕事 -m g h をします(OpenStax, 7.1)。
力が一定でないときは?
仕事は、力と変位のグラフ(F-x グラフ)の下の面積です。 力が 0.50 m の間に 0 N から 40 N まで直線的に増えるなら、面積は三角形なので 1/2 x 0.50 x 40 = 10 J です。
ばねは F = k x に従います。k はばね定数(N/m)です。このグラフも三角形なので、蓄えられるエネルギーは E = 1/2 k x^2 です。k = 200 N/m のばねを 0.10 m 伸ばすと、1/2 x 200 x 0.10^2 = 1.0 J を蓄えます。
仕事率は仕事とどう関係する?
仕事率は、単位時間あたりにする仕事です:P = W / t。単位はワットで、1 W = 1 J/s です。速さ v で物体を動かす力なら、P = F v です(OpenStax, 7.4)。500 kg の荷物を 20 s で 12 m 持ち上げるクレーンは 58,800 J(500 x 9.8 x 12)の仕事をするので、P = 2,940 W です。
例題
g = 9.8 m/s^2 とします。
例題1:斜めの力がする仕事は?
ロープが、床から 30度上向きに 50 N の力で、箱を床に沿って 8.0 m 引きます。
- W = 50 x 8.0 x cos 30度。
- cos 30度 = 0.866 なので、W = 346 J(346.4 J)。
例題2:車を加速させる合力は?
1,200 kg の車が、150 m の間に 10 m/s から 25 m/s まで加速します。
- KE start = 1/2 x 1,200 x 10^2 = 60,000 J = 60 kJ。
- KE end = 1/2 x 1,200 x 25^2 = 375,000 J = 375 kJ。
- 正味の仕事 = 375 kJ - 60 kJ = 315 kJ。
- 合力 = 315,000 J / 150 m = 2,100 N。
確認:a = (25^2 - 10^2) / 300 = 1.75 m/s^2、F = ma = 2,100 N。
例題2を一歩ずつ:二つの運動エネルギーから合力を求める。
車は 10 m/s から 25 m/s に加速します。 運動エネルギーは 60 kJ(0.5 x 1200 x 10^2)から 375 kJ(0.5 x 1200 x 25^2)に増えます。 正味の仕事は 375 kJ - 60 kJ = 315 kJ で、これを 150 m で割ると、合力は 2,100 N です。
例題3:ブロックは止まるまでにどれだけすべる?
2.0 kg のブロックが 6.0 m/s ですべっています。動摩擦係数は 0.30 です。
- 摩擦力:f = 0.30 x 2.0 x 9.8 = 5.88 N。
- KE start = 1/2 x 2.0 x 6.0^2 = 36 J。KE end = 0。
- -5.88 d = 0 - 36 より、d = 6.1 m(6.12 m)。
例題4:すべり台の下で、子どもの速さは?
30 kg の子どもが、高さ 2.5 m のすべり台の上から静かにすべり始めます。摩擦力は -300 J の仕事をします。
- 重力がする仕事 = 30 x 9.8 x 2.5 = 735 J。垂直抗力は仕事をしません。
- 正味の仕事 = 735 - 300 = 435 J。
- 435 = 1/2 x 30 x v^2 より、v^2 = 29、v = 5.4 m/s(5.39 m/s)。
運動エネルギーと仕事の関係の問題はどう解く?
ほとんどの問題に使える四つの手順。
フローチャートには四つの箱があります。まず物体と、はじめと終わりの位置を決めます。次に、すべての力とその仕事を書き出します。 仕事を足して正味の仕事を出し、正味の仕事 = KE end - KE start として解きます。
- 物体と、はじめと終わりの位置を決める。
- すべての力とその仕事を書き出す。 F d cos theta、重力には m g h、摩擦力には -f d を使います。
- 仕事を足して、正味の仕事を出す。 符号はそのまま残します。
- 正味の仕事 = KE end - KE start として解く。
よくある間違いは?
- 加えた力だけを使う。 すべての力による正味の仕事が必要です。
- 符号を落とす。 摩擦力の仕事は負です。上昇する物体に重力がする仕事も負です。
- cos theta を忘れる。 力が斜めにはたらくときに起こりがちです。
- 速さの変化を二乗する。 KE の変化は 1/2 m (v^2 - u^2) で、1/2 m (v - u)^2 ではありません。
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練習問題と解答
g = 9.8 m/s^2 とします。
- 20 N の力が、運動の向きと 60度の角をなして、台車を 5.0 m 引きます。仕事を求めなさい。解答: 20 x 5.0 x cos 60度 = 50 J。
- 15 m/s で動く 0.20 kg のボールの KE を求めなさい。解答: 22.5 J。
- 20 m/s で走る 1,000 kg の車が、8,000 N の力でブレーキをかけて止まります。正味の仕事と停止距離を求めなさい。解答: -200,000 J、200,000 / 8,000 = 25 m。
- 10 kg のかばんを持って、平らな床を一定の速さで 20 m 歩きます。あなたの上向きの力がかばんにする仕事は?解答: 0 J。
- 石を 20 m の高さから落とします。空気抵抗は無視します。地面に着くときの速さを求めなさい。解答: v = (2 x 9.8 x 20) の平方根 = 19.8 m/s。
- k = 400 N/m のばねを 0.05 m 縮めます。蓄えられるエネルギーを求めなさい。解答: 0.5 J。
運動エネルギーと仕事の関係は、カリキュラムのどこに出てくる?
| コース | 出てくる場所 |
|---|---|
| AP Physics 1 | Unit 3: Work, Energy, and Power(トピック 3.1〜3.5)、多肢選択セクションの 18%-23%(College Board) |
| AQA A-level Physics 7408 | 3.4 Mechanics and materials の中の 3.4.1.7 Work, energy and power(AQA) |
| AQA GCSE Physics 8463 | 4.5.2 Work done and energy transfer、ばねのエネルギーは 4.5.3(AQA) |
| NCERT Class 11 Physics | Part I, Chapter 5: Work, Energy and Power(NCERT) |
| JEE Main 2027 | 物理 Unit 4: Work, Energy and Power。運動エネルギーと仕事の関係(work-energy theorem)が明記されています(NTA) |
試験対策については、AP Physics 1 試験ガイド、A-level Physics ガイド、GCSE Physics ガイド、JEE Main 2027 ガイドをご覧ください。
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カリキュラムの記載は、2026年11月2日に公式情報と照合しました。
FAQ
運動エネルギーと仕事の関係を簡単に言うと?
物体にされた仕事の合計は、その物体の運動エネルギーの変化に等しい、ということです。正味の仕事が正なら速くなり、負なら遅くなります。
運動エネルギーと仕事の関係の公式は?
W net = KE final - KE start、または W net = 1/2 m v^2 - 1/2 m u^2 です。m は質量、u ははじめの速さ、v は最後の速さです。
仕事は負になることがありますか?
はい。力が運動と逆向き、つまり 90度より大きい角をなすとき、仕事は負になります。すべる箱にはたらく摩擦力も、上昇するボールにはたらく重力も、負の仕事をします。
かばんを持って部屋を横切っても、仕事をしないのはなぜ?
かばんにかける力は上向きですが、かばんは横に動きます。角度は 90度で cos 90度 = 0 なので、かばんに仕事はしていません。
運動エネルギーと仕事の関係は、エネルギー保存則と同じですか?
同じではありません。この関係は、すべての力による正味の仕事を、運動エネルギーの変化だけと結びつけます。エネルギー保存則は、運動エネルギー、位置エネルギー、熱など、すべての形のエネルギーを追います。
力が変化する場合にも、運動エネルギーと仕事の関係は使えますか?
はい。力と変位のグラフの下の面積から仕事を求めます。よくある例はばねで、1/2 k x^2 のエネルギーを蓄えます。
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