お子さんが教科書をパタンと閉じて「自分はこれが苦手なだけ」と言ったことがあるなら、その言葉の重さはご存じでしょう。算数・数学と理科を理解してほしい、自信を持ってほしい、できれば楽しんでほしい。けれども強い苦手意識が根づいてしまったあと、どうすれば向きを変えられるのでしょうか。
多くの場合、必要なのは内容を増やすことでも、問題を解く量を増やすことでもありません。必要なのは、お子さんと学びとの関係そのものを変えることです。ほとんどの「できない」の裏には、わかりたい・つながりたい・安心したいという満たされない欲求があります。
苦手意識の本当の根っこ──「嫌いだから」ではない
子どもが算数・数学や理科に不安を感じているとき、その理由が「教科が嫌いだから」であることはまれです。多くは、失敗を繰り返した経験、恥ずかしかった記憶、同級生と比べられて劣っていると感じた経験、あるいは一度もきちんと埋められなかった土台の抜けが背景にあります。やがて子どもは、難しい問いを避けたり「自分はこれが苦手なだけ」と繰り返したりして自分を守るようになります。
ですから最初の一歩は、内容を増やすことではありません。心理的安全性です。つまり、お子さんが試し、間違え、自分の考えを口に出しても評価される心配のない場をつくることです。
実際には、こういう形になります。
- お子さんが答えられる問いから始め、自分の言葉で考えを説明させてあげてください。
- 間違いは、学びのごく当たり前で役に立つ一部として扱ってください。
- 手の届く小さな課題を出して本当の成功を味わわせ、そのうえで少しずつ難しくしていってください。
- 進歩が目に見えるようにしてください。たとえば、先月は手も出なかった問題にもう一度取り組んでみることです。
目指すのは、「自分にはできない」を「まだわかっていないけれど、どう考えればいいかはわかる」に置き換えることです。
家庭で試せること お子さんが行き詰まったら、「どこを間違えたの」より先に「ここまでで、わかっているのはどの部分?」と聞いてみてください。
抽象的な概念を、手を動かす体験に変える

つまずいている子にとって、味気ない定義や詰まった式は壁のように感じられます。工夫のある、手を動かす活動は、抽象的な考えと本当の理解との間に橋をかけます。
光合成を例にしましょう。ある生徒には抽象的すぎて覚えられなかったため、講師は定義から始めずに、その生徒自身を「植物」にしました。光・水・二酸化炭素が入力となり、生徒はそのうち一つが足りなくなったら何が起こるかを予想することになりました。演じて予想することで、どんなプリントよりも記憶に残る理解が育ちました。
取り入れられる工夫
- その概念そのものになる。 過程(植物、電気回路、水の循環)を演じ、変える条件は一度に一つだけにします。
- まず予想する。 実験でも計算でも、その前に「どうなると思う?」と聞いてください。外れることも楽しさの一部です。
- 台所を使う。 分数、比、物質の三態は、料理をしながらのほうがずっとつかみやすくなります。
- 描いてみる。 ざっと描いた図は、子どもが何をわかっていて何をわかっていないかを、しばしばそのまま映し出します。
「やらなければ」から「やってみたい」へ──内から湧く意欲を育てる
保護者の方は、学ぶ気持ちが続くのかを心配されることがよくあります。何か月も嫌がってきたあとなら、なおさらです。その答えは、もっと勉強させることではなく、本物の進歩を本人に体験させることです。
- 小さな成功をつくる。 「これはできる」という感覚が自己効力感、つまり努力は結果につながるという確信を育てます。
- 好きなことと結びつける。 スポーツの成績表、ゲーム、音楽、料理──どれも算数・数学や理科の概念を内に抱えています。
- 質問を歓迎し、選ばせる。 どの問題から解くか、どう解くかを、お子さん自身に選ばせてください。
- ほめるところを選ぶ。 点数の高さだけでなく、考え方がよくなったこと、難しい問題に挑む勇気、自分で間違いを直せたことをほめてください。
やがて「勉強しなければ」は「これが解けるか試してみたい」に変わります。外からの絶え間ない圧力がなくても続く習慣です。
「定石」を考え直す──量より質
善意からの助言が、つまずいている子にはかえって逆に働くことがあります。その典型が、同じ形のプリントを繰り返して演習量を増やすことです。子どもが誤った理解を抱えている場合、同じ種類の問題を繰り返すと誤った考え方のほうが固まり、「自分はこれが苦手なだけ」という気持ちがいっそう深まりかねません。
より良いのは、問題数を減らして深く考えることです。
- まず、お子さんがその問題をどう捉えているかを理解してください。
- 考えの筋道を説明させる、結果を予想させる、図を描かせる、のいずれかをしてみてください。
- 少し見慣れない形の問題を試してください。
- 概念がはっきりしたら、狙いを定めた演習を加えます。
目的は、正解の数を増やすことだけではありません。お子さんが「自分に何が足りなかったのかわかった。これなら解ける」と思えることです。
保護者の方への要点

- 心理的安全性を最優先にする。 間違えることを、学びの安全な一部にしてください。
- 手を動かす学びを取り入れる。 役割演技、予想、作図によって、抽象的な考えを手でつかめるものにしてください。
- 内から湧く意欲を育てる。 進歩を一緒に喜び、好きなことと結びつけ、好奇心を後押ししてください。
- 繰り返しより深さを選ぶ。 よく考えられた数問は、積み上がったプリントに勝ります。
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